オンプレミスシステムの刷新と音声認識AIを導入 コンタクトセンターの効率化、高度化を実現
課題
長年運用されてきたオンプレ環境と、属人化が進んだコンタクトセンター業務の改善
- 15年以上使い続けたオンプレミスシステムの刷新とクラウド化
- 公共性が高い窓口として、正確かつ迅速な対応が求められる電話応対の負荷軽減
- 紙資料やFAXによる情報共有から、情報の一元管理・リアルタイム共有への転換
成果
Altius ONE for Support導入によるクラウド移行でシステムを刷新。属人化を解消して業務効率改善
- 音声認識ツール、生成AI、クラウドシステム導入で対応効率向上
- 現場状況の可視化で管理者の判断スピードとフォロー体制を強化
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- 業務内容
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鉄道利用者からのお問合せ受付業務
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- 導入サービス
対談インタビュー
都市交通事業本部 運輸部 課長補佐
お客様サービス担当 中西 一成 様
都市交通事業本部 運輸部
お客様サービス担当 中川 海人 様
ユニット長 古舘 良理
営業部営業ユニット
清水 善治
大阪・梅田を拠点に関西の鉄道網を支える阪急電鉄の「交通ご案内センター」では、お客様の困りごとに寄り添う応対をミッションに、公共性の高い窓口として、正確さとスピード、そしてお客様に寄り添う応対の両立に日々取り組んでいます。近年、定期券やICカードの利用方法、お忘れ物、電車の運行状況の確認など問合せ内容の多様化が進む中、オペレーターの専門知識や経験に依存したアナログな運用が、新規採用や新人育成のハードルとなり、業務の継続性を確保する上での大きな課題に。そこで同社は、「個人のスキルに頼らない、誰でも高品質な案内ができる環境づくり」を決断。BPOベンダーとしての知見を持つアルティウスリンクをパートナーに迎え、オンプレミス環境からクラウドへの移行を進めるとともに、AIツールの導入に着手。その取り組みの舞台裏について、阪急電鉄 中西様、中川様と、アルティウスリンクの担当者に話を聞きました。
紙と経験に依存した案内業務から、誰でも高品質な応対を実現できる体制へ
まずは当時の課題を教えてください。
中西様
鉄道業界のコンタクトセンターは、刻一刻と変化する運行状況を踏まえたリアルタイムで正確な案内が求められるため、応対の難易度が高くなります。その中で長年私たちは、最大限お客様に寄り添った応対、ご期待に沿うサービスを提供できるよう常に心がけてきました。
中川様
一方で、2010年の開設以降、システム更新をほとんど行わずに運用してきた結果、業務効率や品質向上に課題が生じました。オペレーターは多岐にわたる問合せにおいて、「聞く・探す・入力」を正確かつ並行して行う必要があり、対応の難易度が高いことから、ベテランと新人のスキル差が拡大。属人化が深刻化していました。
中西様
現場では紙のダイヤ表を参照しつつの対応やFAX送受信などのアナログ運用が多く残っていました。オンプレミス環境のもと、各システムが分断されていたことで情報を一元的に管理できず、リアルタイムな共有やデータ活用が難しい状況にありました。こうした背景から、オペレーターの熟練度によらない案内品質の均一化と迅速な応対を目指し、基盤システムの刷新を検討。その過程で、アルティウスリンクさんへご相談したことが、今回の取り組みのきっかけとなりました。
実際にアルティウスリンクが運営しているKDDIお客さまセンターの見学もされたそうですね。
中川様
見学では、現場の運用状況やシステム導入までの調整内容を具体的に把握でき、大きな学びがありました。特に、音声の自動テキスト化が品質向上や評価に直結し、機能同士が連動して改善サイクルを回すクラウド運用が印象的でした。自社はオンプレミス環境で閉じた仕組みでしたが、クラウドを活用した継続的な改善の仕組みを知り、当社でも実現できるのではないかと感じる大きなきっかけになりました。
豊富なコンタクトセンター運用経験を活かした、現場に寄り添うシステム刷新計画
こうした課題を踏まえ、どのようなシステムを導入したのでしょうか?
今回は、AIなどの最新テクノロジーやデータを活用し、コンタクトセンター運営の効率化・高度化をトータルで支援するサービス「Altius ONE for Support」の中で、コンタクトセンターの基盤となるシステムインフラ構築を中心にサポートしました。
古舘
具体的な機能のひとつとしては、対話内容を音声認識をつかってテキスト化し、生成AIにより履歴の要約を自動作成できるようにしました。これによりオペレーターの工数と負荷を軽減させることができます。また、応対履歴の蓄積とデータ共有、活用を円滑にするためクラウドCRMも導入しました。
清水
取り組みを進める上で、アルティウスリンクではどのような点に注力したのでしょうか。
鉄道特有の複雑な運用を、クラウド化された新システムに適応させるため、まず設計と調整に注力しました。新システム導入を進めるうえで採用したのは、開発工程をより迅速に進められるアジャイル開発という手法です。現場の高度な運用をシステムに定着させるには、実際に使う方々の意見を反映しながら改善のサイクルを高速で回す必要があると考え、短期開発を繰り返しながら柔軟に完成度を高めていく、この手法を採用しました。
古舘
私たちはシステム構築だけでなく、コンタクトセンター運営も行うBPOベンダーですので、その知見を活かし、「いかに現場がストレスなく継続的に使えるか」を第一に考えました。
清水
特に難しかったのが、長年使ってきた旧システムの運用を、そのまま新環境へ移せるわけではないという点です。そこを無理に置き換えるのではなく、「何を残してどこを変えるか」を一つずつ整理しながら構築しました。
古舘
阪急電鉄様の運用は、駅名などの固有名詞への対応や、走行中の電車を特定してリアルタイムに駅や乗務員と連携するなど、一朝一夕には真似できない高度なものです。鉄道業界ならではの現場運用に適用させるため、毎週2時間の打ち合わせを半年近く継続しながら、細かい部分を一つずつ確認し、最適な形を一緒に探り、課題解決をしてきました。
清水
中川様
長年使い続けた旧システムからの移行は大きな挑戦であり、安定運用に至るまで多くの調整が必要でした。アルティウスリンクさんは私たちの要望を丁寧に受け止め、課題ごとに実現可能な代替案を提示しながら、本当に密なコミュニケーションで並走してくださいました。継続的な対話の積み重ねにより、最終的に納得できる形のシステム移行が実現できたのだと思います。
中西様
また、ただシステムを導入するだけでなく、現場に深く入り私たちの背景や思いまで理解し、寄り添いながらの伴走が可能なのはコンタクトセンターの会社ならではだと思います。だからこそ、この大規模な変革をスムーズに成し遂げられたのだと感じています。

AHT・応答率の改善とオペレーターの負担軽減の両立
2025年12月に新システムを導入され、その後の効果はいかがでしょうか。
中川様
まず定量的な成果として、1件の電話応対にかかる平均処理時間(AHT)が、導入から間もない1月の時点で約30秒短縮されました。これは、新システムのAIによる音声の自動文字起こし、対話履歴の要約によって、タイピング作業の負荷が軽減された効果だと感じています。
おかげ様でコンタクトセンターの応答率は平均して84%以上を維持できるようになっています。過去数年を振り返っても類を見ない高い水準を記録できたことは、現場としても大きな手応えとなっています。
オペレーターからも、新システムによって負荷が軽減されたという声が上がっています。これまでは「お客様の声を聞きながらタイピングする」ことが必要でしたが、今は「システムが書き起こした文章を確認・修正するだけ」で済むようになりました。また、録音音声と書き起こし結果を同一システム内で突き合わせられるので、以前は別々のシステム参照が必要だったことからすると作業が大幅に簡略化され、効率化に直接貢献しています。
中西様
とはいえ、音声の自動文字起こしもまだ完璧というわけではありません。固有名詞や鉄道特有の用語など、修正が必要な場面もあります。ただ、それでも一からタイピングするのに比べれば負担は大きく軽減されており、現場からは十分に実用的だという声が上がっています。
システム変更は、ともすればオペレーターに負担を強いたり、かえって効率を下げてしまったりするような懸念もありました。しかしアルティウスリンクさんは、事前の現場視察、担当者へのヒアリングを行って入念に下準備し、結果、大きな混乱なく導入を実現できました。新システムはオペレーターにも好評です。
中川様
新システムの恩恵はオペレーターのみでなくスーパーバイザーなど管理者にとっても大きいものです。自席にいたまま、どのオペレーターの通話でもリアルタイムにモニタリングできるようになりました。また、お客様とのやり取りは自動で書き起こされるので、複数の通話内容を同時に把握することができます。オペレーターの状況説明無しに、スーパーバイザーが適切かつ迅速なサポートを実行できるようになりました。
属人化から標準化へ。お客様満足を軸にした、持続可能なセンター運営改革
取り組みを振り返っていかがでしょうか。
中西様
今回のシステム刷新で、より良いお客様満足を実現するための土台が整いました。これまでは応対履歴の入力など、属人化していた業務の一部が自動化され、業務全体が可視化されたことは、大きな変化です。これまでオペレーターの経験やスキルに支えられてきた部分も、システムの力を活用することで、一定かつ高水準の品質を担保できる環境に近づきました。今回の取り組みを通して、センター運営のあり方そのものが大きく変わったと感じています。
私たちにとって大切なのは、お客様に「ここに電話してよかった」と思っていただける応対を続けていくことです。今回のシステム刷新をきっかけに、センター全体でより良いコンタクトセンターのあり方を模索しながら、今後もさらなるサービス品質の向上に取り組んでいきたいと思います。
阪急電鉄株式会社は、大阪・梅田を拠点に神戸・宝塚・京都の三都市を結ぶ鉄道ネットワークを核に、「安心・快適」な輸送サービスと、沿線の価値向上を追求する総合私鉄です。単なる交通インフラの提供に留まらず、都市開発や流通、エンターテインメントなど、お客様のライフスタイルに密着した多様な事業を展開。先進的なデジタル技術の導入と、長年培ってきた「安全」への高い専門性を融合させ、持続可能な社会の実現と、沿線住民の皆様が誇りに思える豊かな街づくりをトータルに推進しています。