ベトナム拠点における業務効率30%アップの実現 言語や時差の壁をなくし業務効率化を実現した取り組みとは
課題
事業拡大とBCPを両立できる海外拠点へのバックオフィス業務移管と品質の担保
- 日本語での円滑なコミュニケーション品質の担保
- 難易度の高い業務の円滑な移行と業務範囲拡大への対応
成果
海外拠点の活用による最大30%の業務効率化および多拠点BCP体制の構築
- 教育カリキュラムとスムーズなコミュニケーション体制構築による業務効率化
- 業務範囲拡大の実現とそれによる安定的なBCP体制の強化
-
- 業務内容
-
広告運用に関するレポート作成、経理、人事関連業務などバックオフィス業務全般
-
- 導入サービス
(2025年10月時点)
対談インタビュー
※2025年10月時点
電通オペレーション・パートナーズは、事業拡大とBCP強化に向け、国内(汐留・沖縄)拠点の拡大や新たな拠点の立ち上げを検討するなかで、BPOパートナーであるアルティウスリンクからベトナム拠点活用の提案を受けました。トナム拠点へのバックオフィス業務移管については、日本語でのコミュニケーションや専門業務の再現性が主要課題でした。それらの課題に対し、両社がどう取り組んだのか。移管後の成果や今後の展望も含め、電通オペレーション・パートナーズの岩井社長と、アルティウスリンク法人ビジネス第1統括本部ソリューション第2本部長の吉良、Altius Link Vietnam(*)社長の佐川に、話を聞きました。
*Altius Link Vietnamは日本とアジアを中心にアウトソーシングサービスを提供する、アルティウスリンク株式会社のグループ会社です。
事業成長に伴う拠点拡大とベトナム拠点活用の経緯
ベトナム拠点を活用することになった経緯を教えてください。
岩井社長
電通オペレーション・パートナーズ(以下、DOP)は、電通グループのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)会社です。2016年の設立当初は汐留と沖縄の2拠点体制で運営していましたが、事業拡大に伴い、従来の人員・体制だけでは対応が困難になってきました。この課題を解決するため、BPOパートナーであるアルティウスリンクに相談し、中国大連での委託を決定しました。その後、同社の提案を受け、より戦略的かつ長期的な視点から、ベトナムへの移管を進めることとなりました。
中国からベトナムに移管を提案したポイントは何でしょうか。
中国国内における多様なリスク要因の顕在化により、事業継続体制の見直しの必要性が高まったため、長期的に安心して業務を継続できる拠点として、ベトナム拠点への移管を提案しました。
吉良
言語と専門性の壁を超えるベトナム拠点の3つの取り組み
ベトナムへの移管に関しては、どのような課題があったのでしょうか。
岩井社長
課題は大きく分けて2点ありました。1つが「言語と専門知識の壁」で、2つめが「時差を考慮した納期への対応」です。特に言語に関しては、中国では日本人と同水準の円滑なコミュニケーションが可能であったため、ベトナムにおいても同レベルの連携体制を維持できるかが最大の懸念点でした。
このコミュニケーションの課題は、どう乗り越えたのでしょうか。
ベトナム側では、コミュニケーションの質を維持するために、標準化と教育、管理体制の3点を強化する形で取り組みました。
1つめは、日本語に依存しない運用を実現するための、業務の標準化とマニュアル化の徹底です。
2つめは、日本人管理者の常駐と、高い日本語能力を持つ現地社員の管理者登用です。ベトナムと日本では言語だけでなく文化やビジネス感覚にも違いがあります。この感覚やニュアンスのズレを解消するため、日本語が堪能な現地社員だけでなく、日本人管理者も現地に常駐することで、コミュニケーションの障壁を解消しました。
そして3つめが、専門知識を体系的に習得させるための初期教育カリキュラムです。約2か月間の集中的な教育期間を設け、新入社員を速やかに実践投入できる基盤を確立しました。
さらに当社には、過去に日本語対応のBPOサービスにおいて世界最高峰にあった大連のBPO企業から業務を移管した経験がありましたので、その知見を活かしながら、この3つの柱で包括的に対応することで、言語と専門性の両面における課題をクリアすることができました。
佐川
時差と納期の壁を乗り越える一体感を持った連携体制
もうひとつの課題であった「納期と時差」にはどのように対応したのでしょうか。
DOP様の業務はマーケティング報告書の作成が多く、日次と週次報告が重なる週初に業務が集中します。時差がある中で、日本時間の期日までに、対応できるかが大きな課題でした。
吉良
この課題には、時差を考慮した早朝4~5時からの前倒し勤務を導入して対応しました。立ち上げ期には、日本側との常時オンライン連携による疑問点の即時解消など、手厚いご支援をいただいたことが、今日の安定稼働に直結していると考えています。現在でもDOP様と毎日1時間ごとの進捗共有を行うことで、遅延の兆候を即座にエスカレーションし、時差の課題に対応しています。
佐川
岩井社長
両社には、以前から汐留〜沖縄間で「隣に座っているように」説明・質疑応答を行う遠隔運用のノウハウがありました。この手法をベトナムへ拡張することで、言語や感覚のズレを即座に補正し、物理的な距離を大幅に短縮できたと考えています。
この隣にいるような「Side by Side」の体制に加え、当社スタッフを日本に招いて実地研修の機会を設けていただくなど、業務委託という関係でありながら、まるでDOP様の国内拠点と同等の近さで連携できていることが、安定稼働のもう一つの源泉だと感じています。
佐川
この「One DOP」の一体感を、岩井社長をはじめ現場スタッフに徹底されていることが、ベトナム拠点が機能している最大の要因です。節目ごとの経営層の現地訪問やDOP専用ブースの設営といった支援も現場スタッフのモチベーションを大きく引き上げました。こうした積み重ねが、課題を乗り越え日々の業務を支える原動力になっていると考えています。
吉良
高い自律性と業務改善が生み出すコスト削減と業務スコープ拡大の好循環
ベトナム拠点の運用を、どのように評価されていますか。
岩井社長
おかげさまで汐留・沖縄・ベトナムの3拠点分散体制が実現したことで、運用も安定し、BCP(事業継続計画)も強化することができました。アルティウスリンクとは業務委託という形態でありながら、皆様のおかげで「自社センター」に近い感覚で機能しています。
日々の業務面でも、現地スタッフが自律的に業務フローを見直し、マニュアルの適正化を行うなど生産性向上の取り組みを積極的に進めてくれることを特に高く評価しています。現地スタッフの学習意欲は非常に高く、私が現地に訪問するたびに「もっと仕事を」という意欲的な申し出に加え、横断的な連携や他チームへの支援も増えています。その結果、業務効率が30%向上し、クライアントへの請求額ベースで、最大30%のコスト削減につながったという事例も出ています。もちろんDOPとしての売上は一時的に下がりますが、グループ全体のコスト軽減と、新規業務への余剰ができるという好循環が生まれ、クライアントからの評価も高まり、さらなる業務スコープ拡大の相談が増加している状況です。
「One DOP」を基盤にさらなる高度化と次のビジョンを見据えた体制へ
今後は、どのような点に期待されているでしょうか。
岩井社長
これからは、専門性と難度の高い業務の移管をもう一段階進めていきたいと考えています。ベトナム側では、佐川社長主導のもと、簿記などの日本資格の取得や、ハノイ工科大学とのAI分野における人材連携※1が進んでいます。今後は個々のマルチスキル化とチーム横断連携による稼働の平準化を図りつつ、AI活用も積極的に推進することで、対外コミュニケーションを自走できる層をさらに厚くすることを目指します。
さらに先のビジョンとしては、吉良本部長とも常々意見を交わしている通り、ベトナムを「全業務の受け皿」に近づけ、平時の運用拡張と有事のバックアップの両面を担える体制を目指したいと考えています。また、ベトナムの優秀な人材は日本への就業希望者も多いため、人材流出を防ぐ意味でも、日本国内での就業受け皿の仕組み化を、アルティウスリンクと共同で進めたいと考えています。ベトナムからの優秀な人材の流出防止だけでなく、日本からのグローバル志望人材のベトナム受け入れも含めた、人材の好循環を実現する取り組みです。これからも「Side by Side」の姿勢を貫き、伴走できる環境づくりを続け、「One DOP」を基盤に、より高度な業務に共に挑戦したいと思います。
株式会社電通オペレーション・パートナーズは、従来のBPOから進化した「事業成長型BPO」を強みとするオペレーションの専門会社です。フロント・ミドル・バックオフィスにまたがる幅広い領域を対象に、メディア業務やデジタル運用型広告オペレーションなど専門性の高い業務まで対応。業務コンサルティングでプロセス全体を見直し、アウトソーシングすべき業務を明確化しながら、お客様の事業成長に伴走するソリューションをトータルに提供しています。(2025年10月時点でのインタビューです)