自己解決率向上のためのFAQ /AIチャットボット改善方法

コラム

2025.05.14

アルティウスリンクは、りらいあコミュニケーションズとKDDIエボルバが経営統合した会社です。

「FAQやAIチャットボットを導入したにもかかわらず、自己解決率が向上しない」

アルティウスリンクには、こんなお悩みを抱えたお客様企業より多くのご相談が寄せられています。そこで今回は、お客様企業向けに実施した「FAQ/AIチャットボット品質改善セミナー」より、自己解決率向上を促進するFAQ/AIチャットボットの品質改善方法について解説いたします。

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この記事の著者

アルティウスリンク編集部

KDDI三井物産の共同出資会社のデジタルBPO企業として、幅広い業種の企業様に最新ソリューションサービスを提供するアルティウスリンクの知見を活かし、事業課題の解決に向けたヒントとなる情報を発信します。

FAQ/AIチャットボットのよくある課題

  • 利用数が伸びない:FAQやAIチャットボットの存在自体が認知されていない。
  • FAQに掲載する適正量がわからない:多すぎると探しにくく、少なすぎると必要な情報が見つからない。
  • 検索精度が低い:適切なFAQにたどり着けない。
  • 自己解決率が低い:顧客がFAQを見ても問題が解決しない。

FAQ/AIチャットボットについてよくある課題点として挙げられるのが、「利用者数が伸びない」「FAQに掲載する適正量がわからない」「検索精度が低い」「自己解決率が低い」という4点です。そして、さらに共通している問題点として、「改善したいがどうすればいいかわからない」というお悩みを抱えています。

また社内リソースの問題から、「FAQ/AIチャットボットの改善はしたいが、工数を割く余裕がない」と対応を後回しにしている企業も少なくありません。

しかし、FAQ/AIチャットボットの利用ニーズは年々高まっており、顧客満足度向上を図るうえでも、その重要度は高まっています。そのため、可能な限り素早い改善策の実行が求められています。

顧客の約9割が自己解決を望んでいるが、自己解決率が上がらない

商品・サービスについて、疑問点や不安点があったときおよび最初に利用している手段
利用に大きな支障はないが、疑問点や不安点があったとき

アルティウスリンクでは一般の顧客を対象に、疑問点や不安点があった時にとる行動についてアンケート調査を行ったところ、顧客の約9割が「まずは自分で調べる」と回答しました。また、大きな支障はないが疑問点や不安点があったとき、「自分で調べ、分からなければあきらめる」層が3割以上を占めていました。

このことから、FAQサイトやAIチャットボットの回答品質を上げれば、顧客の自己解決率を向上させられることは明らかです。自己解決率が向上できれば、有人窓口への問合せ件数を削減し業務効率化を図れることはもちろん、顧客満足度を向上させることも可能となります。

自己解決を望む顧客が多いにもかかわらず、FAQやAIチャットボットの利用率が上がらない、自己解決率が低いというギャップを解消するには、FAQ/AIチャットボットの品質を向上させることが重要です。

顧客の自己解決を促すFAQ/AIチャットボットの品質向上サイクル

顧客の自己解決を促すFAQ/AIチャットボットの品質向上サイクルのステップ1からステップ4
  • 利用数の増加...チャネルにたどり着けるか
  • 適量性の確保...顧客にとって必要なFAQが揃っているか
  • 検索性の向上...目的のFAQに辿り着きやすいか
  • 有効性の向上...FAQの内容で解決できるか。内容は理解しやすいか

顧客の自己解決を促すための、FAQサイトやAIチャットボットの品質向上方法は「利用数の増加」「適量性の確保」「検索性の向上」「有効性の向上」という4ステップの品質向上サイクルを回していくことが基本となります。

例えば、「FAQやAIチャットボットの利用数が少ない」という課題がある場合は、まずは利用数を増やすことが最優先となります。

また「FAQを見ても知りたい回答がなかった」という顧客の声が多いようであれば、掲載している回答の適量性が十分でない可能性が考えられますし、回答が掲載されているにもかかわらず、顧客から「FAQを見ても自己解決できない」という声が多ければ、FAQ/AIチャットボットの回答精度が悪い可能性が考えられます。

「FAQの回答を見てもよくわからなかった」「書いている内容がうまく理解できない」といった声が多いようであれば、FAQ/AIチャットボットの有効性が低いと判断できます。

このように、自社のFAQ/AIチャットボットの課題がどのステップにあるのかを特定し、課題改善をしたら次のステップに進み、順次品質向上サイクルを回していくことが大切です。

品質向上サイクルを活用したFAQ/AIチャットボットの改善ノウハウ

それでは具体的に、品質向上サイクルを活用したFAQ/AIチャットボットの改善ノウハウを解説いたします。

ステップ1:利用数の増加

  • 導線の最適化:ウェブサイトのトップページやお問い合わせページに目立つリンクを設置。
  • 流入導線を増やす:電話対応のIVR(自動音声応答)からのSMS送信やLINE公式アカウントから、FAQやAIチャットボットへ誘導。

そもそもFAQやAIチャットボットの利用数が少ない場合は、FAQ/AIチャットボットへの導線が、顧客にとって分かりづらいものとなっている可能性があります。この場合、まずは顧客が簡単にアクセスできるような導線設計を検討しましょう。

導線の最適化

ユーザー負担が少なく、見つかりやすい導線にする

サイト上部・サイドのグローバルメニューやランチャーメニューなど、初めてサイトに訪れた顧客でも、ファーストビュー内で直感的にわかる導線を設計し、FAQ/AIチャットボットの利用を促しましょう。

流入導線を増やす

他チャネルからの流入導線を用意することも、利用数増加施策として重要です。

他チャンネルからの流入導線をつくる

例えば電話問合せの際に、直接オペレーターにつなぐのではなく、IVR(自動音声応答)によるガイダンスとして、FAQ/AIチャットボットの利用アナウンスを介すると、オペレーターの対応工数を削減し、自己解決率向上につなげることが可能となります。

どれだけ品質の高い回答を用意していたとしても、顧客がFAQ/AIチャットボットに辿りつけなければ意味がありません。初めて利用する顧客でも簡単にアクセスできるような導線を設計しましょう。

ステップ2:適量性の確保

「適量」とは、多すぎず、少なすぎない状態
  • コンタクトリーズン分析:顧客がどのような質問をしているのかを分析し、FAQの必要数を決定。
  • スコープ(範囲)の明確化:FAQで対応できる範囲を定め、FAQで解決できない(自己解決できない)問題は別のサポートチャネルに誘導。
  • 不要なFAQの削除:一定期間閲覧されていないFAQは整理し、検索の邪魔にならないようにする。

適量性の確保」とは、簡単に言えば、顧客にとって多すぎず、少なすぎないFAQ(回答)を準備することです。そしてその適量性を確保するうえで重要なのは、「コンタクトリーズン分析」と「スコープの明確化」を行い、FAQの追加や削除を行うことです。

コンタクトリーズン分析

コンタクトリーズン分析を行い、ユーザーが「知りたいと思っていること」を特定、不足しているFAQ(回答)を作成

コンタクトリーズン分析では、入電割合とその問合せ内容で自己解決できるか否かを確認します。そしてその問合せが、FAQ/AIチャットボットで設定したスコープの範囲内かどうか、さらにその問合せの回答がFAQに掲載されているかどうかを確認します。

この分析で、入電割合が高く、自己解決が可能で、FAQ/AIチャットボットで設定したスコープの範囲内の問合せであるものの、FAQに回答が掲載されていないとなった場合は、それが不足しているFAQと判断することができます。入電割合がさほど高くない場合は、もちろんFAQ/AIチャットボットに回答を掲載するのが望ましいのですが、優先度としては低くなります。

またスコープ範囲外の問合せであれば、そもそもFAQ/AIチャットボットによる自己解決を想定していないため、FAQ/AIチャットボットに回答を用意する必要はありません。逆に掲載している場合は、削除を検討することも可能です。

コンタクトリーズン分析により、「顧客が知りたいと思っている情報」を特定することができるのです。

スコープ(範囲)の明確化

スコープ(範囲)を定め遵守する

適量性を確保するには、「スコープの明確化」も不可欠です。

スコープ」とは、FAQ/AIチャットボットを使って顧客に自己解決してほしい範囲のことです。FAQ/AIチャットボットが対象とする問合せ内容、スコープの範囲を、サービスの種類や問合せ種類、サポート対象の有無などで定義すると、不必要な回答を掲載する必要がなくなり、適量性を確保することができます。

自己解決チャネルが苦手な対応とは?内容により、スコープ範囲からの除外も検討する。

また、自己解決できない問合せ(スコープの範囲外の問合せ)が多い場合は、最初に設定したスコープ自体の見直しが必要なケースもあります。

FAQ/AIチャットボットは、あくまでも「自己解決チャネル」です。そのため、本人確認やクレーム対応など、自己解決が難しくオペレーター対応が必須な問合せに関するFAQが掲載されていても、結局自己解決できず、かえって顧客のネガティブ評価を招く恐れがあります。

自己解決チャネルとして機能できない問合せをスコープ範囲として設定している場合は、スコープからの除外も検討しましょう。

不要なFAQの削除

不要なFAQの削除のイメージ

スコープ範囲内のFAQだとしても、一定期間見られていないFAQは、削除することも検討してください。

もし季節要因などのトレンドで閲覧数が変動するなど、削除できない理由がある場合には、必要なタイミングを見計らって限定公開するなどして、適量性を確保するようにしましょう。

ステップ3:検索性の向上

  • 検索しやすい導線設計
  • 該当のFAQに辿り着きやすい検索機能
  • AIチャットボットには意図が一致する学習データのみを紐づける

利用数が増加し、適量性を確保しても、顧客にとって使いにくいFAQとなってしまっては、返って顧客の不満を高めてしまいます。そのため、顧客が使いやすいFAQ=希望の回答に辿り着きやすい検索性を持ったFAQとすることが重要です。

検索しやすい導線設計

ユーザー負担が少なく、FAQ(回答)にたどりつきやすい導線設計、ファーストビューに高ニーズ、注目FAQ(回答)等への直接導線を設置。検索させない。

問合せの多いFAQなど、高ニーズの質問に関しては、ファーストビューに直接FAQへの導線を設置し、顧客が検索しなくとも回答に辿り着ける工夫が必要です。

ユーザー負担が少なく、FAQ(回答)にたどりつきやすい導線設計、カテゴリ検索、キーワード検索など

また検索機能についても、キーワードの入力フォームや実行ボタンなどの主要機能はファーストビュー内に収めることが重要です。こうすることで、顧客も「どうやって検索すればいいか」ということを直感的に理解し、希望の回答にスムーズに辿り着くことができます。

さらに、掲載するFAQのカテゴリ構成もしっかりと設計する必要があります。

ユーザー負担が少なく、FAQ(回答)にたどりつきやすい検索機能、カテゴリー構成

問合せの種類に応じ階層構造となったFAQにすることで、顧客が「どの場所に希望の回答が掲載されている」と直感的に理解しやすくなります。

FAQの階層構造は、AIチャットボットのシナリオ構成においても活用できます。検索する問合せのカテゴリに応じて、ツリー構造のシナリオ・回答を用意することで、的確な回答まで誘導することができます。

該当のFAQに辿り着きやすい検索機能

ユーザー負担が少なく、FAQ(回答)にたどりつきや検索機能、キーワード検索

さらに検索機能においては、各FAQと単語の紐づけはもちろん、「あいまい検索機能」や「サジェスト機能」など、抽象度の高い検索に対しても柔軟に対応できる検索機能を持たせる必要があります。

そうすることで、「検索したけど該当の回答がゼロだった」「検索結果が多すぎて結局どれが該当の回答なのかわからない」とったトラブルを防ぐことができます。

AIチャットボットには意図が一致する学習データのみを紐づける

各回答に学習データを紐づけるタイプのAIチャットボットの場合、学習データの質が重要、意図が一致する学習データのみを紐づける

AIチャットボットの場合、紐づける学習データの質がとても重要となります。言い回しが異なる質問内容に対して、質問意図が一致したものを紐づけないと、AIチャットボットによる誤誘導を招いてしまう恐れがあるからです。

重要なのは質問意図です。質問意図が一致しているものを学習させれば、言い回しの違いもカバーして最適な回答を提示できます。AIチャットボットで正確な回答が出せない場合は、学習データの質に問題がある可能性があります。AIチャットボット導入の際は、質問意図が一致した学習データのみを紐づけるようにしましょう。

ステップ4:有効性の向上

  • 端的な結論と視覚的な読みやすさ。補足情報は最低限に
  • 条件により回答が異なるFAQはウィザード型に

適量性・検索性に問題はない場合でも、「有効性」(読みやすさ・わかりやすさ・役に立つ)が十分でなければ、自己解決率の向上にはつながりません。

FAQ/AIチャットボットで有効性を高めるには、「自己解決を実現する端的な結論」「視覚的な読みやすさ」「最低限に抑えた補足情報」が重要となります。

また条件により回答が異なるFAQはウィザード型のFAQにし、条件に応じた回答に誘導できるようにしましょう。

端的な結論と視覚的な読みやすさ。補足情報は最低限に

低品質なFAQでよくみられるものが、「平文テキストを長文で書き連ねた回答」です。内容的には、確かに自己解決に導く回答は記載されています。しかし、多くの顧客が「読みづらい」と判断し、途中で読むのをやめてしまいます

端的な結論と視覚的な読みやすさのイメージ図

情報量が多いFAQの場合は、はじめに結論(有効な解決策)を端的に提示し、手順などはリスト化することで、視覚的に読みやすいFAQにまとめることができます。またFAQに補足情報が必要な場合は、必要最低限なものにとどめましょう。自己解決に無関係な情報であれば、補足情報そのもの が必要ありません。

端的な結論や視覚的な読みやすさではダメ。ユーザー目線も重要

例えば「クレジットカードの不正利用」に関する問合せがあった場合、端的な結論として「利用規定に沿って補償いたします。ご安心ください」とだけFAQに記載しても、「すぐに保証してほしい」「具体的な補償手続きを知りたい」といった顧客ニーズには対応できていません

「端的な結論と視覚的に読みやすいFAQ」というのはFAQの基本です。しかし、特にセンシティブな問合せに対してはそれだけでなく、顧客目線でどのような回答が求められているのかを十分に検討したFAQを用意することが大切です。

ニーズはつかんでいるはず?実は・・・

またAIチャットボットにおいては、「端的な回答を用意しているはずなのに、ネガティブ評価が多い」という問題がよく見られますが、これは顧客の質問意図を理解していない回答となっている可能性があります。このような場合は、リクエストログを分析し、顧客の質問意図を把握することが重要です。

一例として、「請求書の発行日を教えてください」というFAQに対するリクエストログを確認してみると、「発行日を知りたい」というよりも、「発行日を過ぎても請求書が届かない」「請求書を再発行してほしい」といった質問が多かったケースがあります。このような質問に「発行日は毎月25日です」と回答すれば、ネガティブ評価になるのは当然です。

AIチャットボットの場合は、自然文のリクエストログを確認することで、FAQを適宜ブラッシュアップすることができます。「端的な回答を用意しているはずなのに、ネガティブ評価が多い」とお悩みの場合は、一度リクエストログを確認しましょう。

条件により回答が異なるFAQはウィザード型に

同じQでも条件により回答が異なるような場合には、ウィザード型のFAQ(回答)を

顧客が契約しているサービス内容などによっては、同じ質問であっても回答が異なるケースがあります。このような場合は、顧客が設問に答えながら回答に辿り着けるウィザード型のFAQ(分岐型 FAQ)を用意しましょう。

平文で条件をひとつひとつ説明しても、顧客にとって不必要な情報が羅列された長文のFAQとなってしまいます。対してウィザード型FAQであれば、顧客が自分の条件に合った回答だけを簡単に見つけることができます。

FAQ /AIチャットボット改善のまとめ

FAQ /AIチャットボット改善のイメージ図

FAQ /AIチャットボットを改善するには、「利用数の増加」「適量性の確保」「検索性の向上」「有効性の向上」の品質向上サイクルを回すことが重要です。

「利用数の増加」では「顧客に負担をかけない導線の最適化」と「流入導線の増加」を検討。「適量性の確保」では、コンタクトリーズンの分析とスコープ設定を行い、必要なFAQ量を明確化します。その際に、見られていないFAQについては削除も検討しましょう。

「検索性の向上」では、ニーズの高いFAQの導線設計や検索機能の工夫が必要です。AIチャットボットの場合は、学習データの質も重要となります。「有効性の向上」においては、「端的な結論と視覚的に読みやすいFAQ」にまとめ、補足情報は最低限にとどめるようにします。そのうえで、顧客目線に立った回答を作成しましょう。

プロによるFAQ/AIチャットボットアセスメントサービス

プロによるFAQ/AIチャットボットアセスメントサービスのイメージ画像

FAQ/AIチャットボットの品質改善は、そう簡単に実現できるものではありません。品質向上サイクルを適宜回しながら、課題を都度解決するには十分なリソースが必要となりますし、分析作業に長けた人材を確保するもの難しいため、「FAQ改善に割くリソースがない」とお悩みの企業も少なくありません。

そんな時は、ぜひアルティウスリンクのアセスメントサービスをご検討ください。アルティウスリンクでは、「FAQのプロ」と呼べるコンサルタントによる「FAQナレッジアセスメント」サービスや「AIチャットボット品質アセスメント」サービスをご用意しております。

FAQナレッジアセスメントでは、お客様企業の品質向上に向けたプロセスごとの課題を確認・分析。既存FAQ 内容(質問文、回答文)の改善など、具体的な改善提案も実施します。またAIチャットボット品質アセスメントでは、AIチャットボットの構築・運用ノウハウを基に、当社独自の品質評価指標を用いてお客様企業のAIチャットボットをアセスメント。品質を数値化して運用面の課題を抽出、改善策を提案します。

FAQ/AIチャットボットを導入しているものの、自己解決率の向上につながらないとお困りの際は、KDDI・三井物産が共同出資するデジタルBPO企業として、ナショナルクライアントから中小企業まで幅広いお客様企業のビジネスを支援しているアルティウスリンクまでぜひご相談ください。

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