インボイス制度について企業がとるべき行動とは

コラム

2022.09.28

アルティウスリンクは、りらいあコミュニケーションズとKDDIエボルバが経営統合した会社です。

2023年に導入予定の新たな税制度「インボイス制度」をご存じでしょうか。企業はこの制度施行に対し、新たな請求書書式への対応やこれらの処理フローの見直しといったさまざまな対応が必要となります。今回はインボイス制度の概要と、企業が対応すべきことについてお伝えします。

インボイス制度とは

インボイス制度とは、2023年10月1日より導入される国の制度であり、正式名称は「適格請求書等保存方式」です。これは、消費税の仕入税額控除を行う際の申請方法が変わるものであり、適格請求書でなければ、この仕入税額控除を適用できなくなるというものです。
消費税は、売上の際にかかった消費税から仕入れでかかった消費税を差し引いた金額のみを納税する「仕入税額控除」が認められています。

仕入税額控除とは?

この「仕入税額控除」を受けるためには、「法定事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が要件」とされています。インボイス制度導入により、この記載すべき法定事項が変更となるわけですが、具体的にどのような変更が加わるのでしょうか。

制度に対応するためには、請求書への記載事項の追加が必要

従来の請求書書式は「区分記載請求書等保存方法」という以下の項目を満たす必要がありました。

インボイス制度導入前の請求書イメージ
  • 書類の作成者の氏名又は名称
  • 課税資産の譲渡等を行った年月日
  • 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
  • 税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額(税込価格)
  • 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

引用:国税庁「適格請求書等保存方式の概要 -インボイス制度の理解のために-」

一方、インボイス制度導入後は上記に加え、「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」3つの項目を追加した以下の項目を満たす「適格請求書(インボイス)」の書式で保存、申請する必要があります。

インボイス制度導入後の請求書イメージ
  • 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

引用:国税庁「適格請求書等保存方式の概要 -インボイス制度の理解のために-」

この中の「登録番号」は、適格請求書の発行を認められた事業者である「適格請求書発行事業者」の登録企業にのみに付与される番号です。つまり、請求元である売手が適格請求書発行事業者の登録を行っていなければ登録番号を記載や適格請求書を発行することができず、請求先である買手は仕入税額控除に必要な適格請求書を入手することができません。

インボイス制度導入後における売手と買手の請求書やりとりのイメージ

インボイス制度は多くの企業で対応が求められる

インボイス制度への対応は売手、買手双方に求められます。

売手が行うべき対応

売手の中でもまず対応が求められるのは「免税事業者」です。免税事業者とは、基準期間(個人の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者を指し、消費税の納税義務が免除されています。インボイス制度施行後も、これまでと同様に免税事業者のまま免税措置を受けることができますが、適格請求書発行事業者の登録ができないため適格請求書を発行することができません。適格請求書が発行できない場合、買手である取引先が仕入税額控除を受けることができず、多くの税負担を強いることとなります。そしてこのような負担を回避しようと、取引先の見直しを検討する可能性があります。この状況を回避するためには、免税事業者を辞退し、適格請求書発行事業者への登録も視野に検討する必要があります。

一方、納税義務がある「課税事業者」も対応が求められます。
課税事業者は適格請求書発行事業者の資格がありますが、登録が別途必要のため、確認が必要です。また、前章の通り、発行する請求書に記載すべき項目が追加されることから、その書式への変更、電子帳簿保存法に則した保存・保管、新たなチェックフローの構築など、経理業務の見直しが求められます。

買手が行うべき対応

買手となる企業もさまざまな見直しが必要です。
買手となる企業は、売手となる取引先が適格請求書発行事業者であるかの確認し、そうでない場合は契約を続け自社で税を負担するか、取引先を変更するかといった検討を行う必要となります。また、取引先が適格請求書発行事業者とそうでない事業者の双方が存在する場合、今後請求書が混在する可能性があり、保存や管理のためフローの見直しや複雑な経理処理が求められます。

インボイス制度に対する対策フロー図

インボイス制度に対する対策フロー図
売手 A
  • インボイス不可
  • 取引先変更のリスク

インボイス発行不可。
これにより買手に税負担を強いることとなり、取引先の見直しが発生する恐れあり。

B
  • インボイス可
  • 納税義務の発生
  • 請求書変更あり
  • 業務フロー見直し

課税事業者となり、適格請求書発行事業者の登録を行うことで、インボイス発行可。 一方、納税義務が発生する。
新書式に対応する請求書への変更が必要。これに伴い、事務処理フローの見直しが必要となる。

C
  • インボイス可
  • 請求書変更あり
  • 業務フロー見直し

適格請求書発行事業者に登録があれば、インボイス発行可。
新書式に対応する請求書への変更が必要。これに伴い、事務処理フローの見直しが必要となる。

買手 D
  • 税負担増
  • 請求書変更あり
  • 業務フロー見直し

免税事業者からの請求は仕入税額控除が受けられず税負担増。また、受理する請求書書式が複数存在することとなり業務フローが煩雑になるため、見直しが必要。

E
  • 請求書変更あり
  • 業務フロー見直し

受理する請求書書式が変更となるため、事務処理フローの見直しが必要となる。

適切な対応を行うには業務全体の可視化が必須

インボイス制度は2023年10月1日から導入され、その後も6年間の段階的な経過措置が設けられていますが、数年ごとに控除率が低下していくため急ぎ対応が求められます。インボイス制度に適した新たな請求書の作成などは、現状の事務処理フローの部分的な変更と思われがちですが、これにより、システムへの入力欄の追加や、項目増加による処理時間が変化するなど、後工程にも影響を及ぼします。また、控除可と不可の複数の請求書が混在する場合は、双方の後続の手続き方法も異なるため、処理フローを分岐させるといった対策が必要となります。

見直しの際は、まず現状のフロー全体を俯瞰することが大切です。フロー全体を理解し、一部の変更がフロー全体のどこに影響を及ぼすかを把握しなければ、インボイス制度導入の前後で処理方法が変わり、やり方が分からない、処理方法が変わってしまい非効率となるといった思わぬ点で問題が生じます。これを防ぐためにも、一見影響がないような業務も含めて現状を整理し、フロー変更による全体への影響を確認することが必要です。

業務の可視化には多くの時間を要することになり、自社内でのリソース確保も重要な課題となります。
当社では、事務作業のフロー全体を可視化し、課題を抽出、解決策を提案する「業務プロセス可視化サービス」というサービスを提供しています。今回の制度改正への対応に向けた全体のフローの可視化はもちろん、事務処理全体の効率化に向けた課題抽出やソリューションの提案が可能です。

インボイス制度への対応や既存業務の効率化を検討の方はぜひご相談ください。

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