FAQサイトの効果的な構築・運用方法と改善策

コラム

2025.05.14

アルティウスリンクは、りらいあコミュニケーションズとKDDIエボルバが経営統合した会社です。

お客様からのよくある質問とその回答をまとめた「FAQサイト」を取り入れると、問合せ件数の削減・業務効率化を図ることが期待できます。

しかし、FAQサイトを作成したものの「お客様からの問合せ件数が削減できない」とお悩みの企業が少なくありません。

そこで今回は、アルティウスリンクのFAQコンサルタントがお客様企業向けに実施したセミナーの資料を使いながら、FAQサイトの効果的な構築・運用方法と改善策について解説いたします。

FAQナレッジアセスメント

この記事の著者

アルティウスリンク編集部

KDDI三井物産が共同出資するデジタルBPO企業として、幅広い業種の企業様に最新ソリューションサービスを提供するアルティウスリンクの知見を活かし、事業課題の解決に向けたヒントとなる情報を発信します。

「FAQを見ても解決しなかった」と不満を持つお客様が多い

FAQを見ても解決しなかった、グラフで見たイメージ

「お客様」という記事にて詳しく解説していますが、現在FAQサイトの利用ニーズが高まっているものの、「FAQを見ても問題が解決しなかった」という不満を持つお客様は約46%と多いことがわかります。

実際、アルティウスリンクで「問合せをしようとしたときに困った経験」というアンケート調査を行ったところ、「FAQを見ても問題が解決しなかった」という回答が全体の2位を占めており、自己解決率の向上を図るどころか、お客様満足度に大きな影響を与えていることが明らかになりました。

高品質なFAQサイトを用意できれば、お客様の自己解決率が高まり、コールセンター/コンタクトセンターへの問合せ数が削減できます。さらに、お客様満足度の向上も期待できます。今や質の高いFAQサイトの構築・運用は、企業にとって重要課題といえるのです。

FAQサイトの品質向上を図るにはどうすればいいのか。そこで重要になるのが、担当者による「品質向上サイクル」の実施と、企業一丸となって取り組む「運用性」の確保です。

自己解決率向上に向けた、FAQサイト品質向上の3ステップ+α

FAQサイト品質向上の3ステップのイメージ プラスα
  1. FAQ適量性の確保
  2. FAQの効率性向上
  3. FAQサイトの有効性向上

アルティウスリンクはFAQサイトの品質向上サイクルを、大きく「適量性の確保」「効率性の向上」「有効性の向上」の3ステップであると捉えています。

FAQの品質向上には、まず、現状のFAQサイトの課題が、この3つうちどれに該当するのかをしっかりと把握する必要があります。

FAQ適量性の確保

FAQではユーザーにとって多すぎず、少なすぎないFAQ(回答)を準備することが重要です。

「掲載しているQAの数が多すぎる / 少なすぎる」「スコープ(範囲・内容)が曖昧」といった課題がある場合、FAQに掲載しているQA数が適正でない可能性があります。まずは必要量のコンテンツにのみ絞り、そのうえで「効率性の向上」「有効性の向上」のサイクルを回していけば、ルールやフローの複雑化を防止しつつ、改善・運用コストを最適化することができます。

FAQの効率性向上

FAQの量が適正で、質の高い回答が掲載されていたとしても、お客様が目的のFAQにたどり着けなければ、自己解決には導けません。

FAQに答えを掲載しているのに、問合せ件数が減らない」といった課題がある場合は、このFAQサイトの効率性に問題がある可能性があります。

お客様がどんなキーワードで質問しようとしているのか、カテゴリ分けでスムーズな検索性を実現できるかなど、FAQサイトの検索性・効率性を改善することも、品質向上において重要となります。

FAQサイトの有効性向上

FAQの適量性・効率性に問題はない場合でも、「有効性」(FAQの読みやすさ・わかりやすさ・役に立つ)が十分でなければ、自己解決率の向上にはつながりません。

よくある問合せ内容から、お客様がどんな疑問・質問を持っているのかを理解し、お客様目線で読みやすく、わかりやすく、役に立つFAQを用意するためにも、回答内容ライティングルールの見直し、自己解決率の検証などを行い、有効性を高める施策を打つ必要があります。

品質向上サイクルを回すための「運用性の確保」

品質向上サイクルを回すための「運用性の確保」のイメージ

「適量性」「効率性」「有効性」の品質向上サイクルを継続的に実施するには、FAQサイトの管理・運用体制を構築することが不可欠です。

品質向上サイクルの3ステップだけでなく、KPIの設定・達成状況の確認も適宜行える管理・運用体制をしっかりと検討することが、質の高いFAQサイトを構築する重要な要素となるのです。

FAQサイトにおける7つの頻出課題と解決策

FAQサイトにおける7つの頻出課題と解決策のイメージ
  1. スコープが曖昧(適量性)
  2. ユーザーニーズとの不整合(適量性)
  3. スマホ利用ユーザーへの考慮不足(効率性)
  4. 質問文が曖昧(効率性)
  5. 質問文の範囲外の回答(有効性)
  6. 回答文の不適切表現(有効性)
  7. 自己解決できないFAQ(運用性)

それでは具体的に、FAQサイトで頻出する7つの課題と、その解決策について解説いたします。

スコープが曖昧

FAQの対応範囲、ユーザーに自己解決してほしい範囲

FAQサイトの基本的な課題として挙げられるのが、「スコープが曖昧」という点です。

スコープとは「FAQサイトの中で、お客様に自己解決してほしい範囲」のことで、FAQサイトが対象とする問合せ内容を、サービスや問合せの種類、サポート対象の有無などで定義することです。

FAQサイトの対応範囲、スコープがしっかりと定まっていれば、掲載すべき情報が明確になり、お客様にとって不要なFAQを削除することも容易になります。逆にスコープが曖昧な場合、本来であれば対応範囲外のFAQを掲載したり、本人確認やオペレーター対応が必須な問合せのFAQを掲載したりする可能性があります。

また「自己解決できないFAQ」を掲載してしまうと、その回答を見てもお客様は自己解決できず、結果お客様の不満を高めかねません

FAQサイトは「自己解決チャネル」であるという前提の上で、自己解決が苦手な分野のFAQは掲載しないなど、スコープをしっかりと定めるようにしましょう。

ユーザーニーズとの不整合

A社様の場合、FAQにおけるコンタクトリーズンの役割のイメージ図

FAQサイトの情報とお客様ニーズの不整合も、よくある課題の一つです。

実際にアルティウスリンクで支援したお客様企業において、掲載しているFAQと、お客様が有人チャネルに問合せてきた理由(コンタクトリーズン)を突合調査したところ、コンタクトリーズン上位の問合せのうち、FAQに回答が掲載されているものは10%未満になりました。つまり、大半のFAQが削除候補になりうるものだったのです。

お客様ニーズとの不整合を解消するには、コンタクトリーズン分析を行い、「お客様が知りたいと思っている情報」を特定し、必要なFAQの作成と不必要なFAQを削除することが何よりも重要です。特にコンタクトリーズンとして20%以上を占める問合せのFAQを掲載すると、FAQサイトを閲覧する80%のユーザーの問合せに対応できる可能性があります(パレートの法則)。

ただ、コンタクトリーズン外のFAQだからといって、必ずしも削除対象とならない点には注意が必要です。そもそも自己解決できているから問合せが少ない(=コンタクトリーズンが少ない)可能性がありますし、季節要因などのトレンドも影響している可能性があります。また閲覧が少ない場合は、該当のFAQにたどり着けないという効率性・検索性の問題である可能性もあります。

FAQ内に重複内容が含まれている場合は、削除対象としての優先度は高くなります。ただ、「コンタクトリーズンが少ない」「閲覧回数が少ない」という理由だけでは、必ずしも不必要なFAQと判断できないため、複数の観点から確認することが大切です。

スマホ利用ユーザーへの考慮不足

スマホ利用ユーザーへの考慮不足、解決策①、②のイメージ

お客様がFAQサイトを閲覧する際に利用するデバイス(機器)を「FAQナレッジアセスメント」において調査した結果、5割~7割のお客様がスマホ(モバイル端末)を利用してFAQサイトにアクセスしておりました。FAQサイトを作る際、スマホユーザーに対する配慮は重要です。しかし、スマホ表示での視認性が悪いFAQサイトが少なくないのが現状です。

PCだと一行で全文表示される「よくある質問」が、スマホでは折り返しが発生する3行以上の長文になったり、3点リーダーなどで省略表示されたりするのは、スマホ表示のよくある視認性の問題です。可能な限り、要点のみを記載した簡潔明瞭なFAQにしましょう。

ライティングルールなどでサービス名の固定表記を必須としている企業も見られますが、重要なのはお客様視点で読みやすい・わかりやすいかという点です。特定サービスに限らないFAQの場合はサービス名をカットしたり、要点のみを記載し補足は最小限にとどめたりして、スマホ表示での視認性を十分に考慮しましょう。仕様確認時にスマホ表示(特に検索結果画面)をチェックすることは必須事項です。

質問文が曖昧(一意ではない)

質問文:解約時の違約金について教えてください、回答分が「違約金の金額案内」だったら・・・のイメージ

FAQの質問文が曖昧で一意ではないというのも、FAQのよくある課題です。

例えば「解約時の違約金について教えてください」という質問文をFAQに掲載する場合、「違約金がいくらなのか知りたい」「違約金の発生条件を知りたい」「違約金をいつ支払うのか知りたい」「そもそも違約金があるかどうか知りたい」など、それぞれ異なる複数のニーズに対応するFAQとなってしまいます。

この中で、ユーザーの質問意図が「いくらなのか知りたい」であれば、FAQによる自己解決ができます。しかしそれ以外は自己解決できず、有人チャネルの問合せが発生しますし、場合によってはお客様満足度の低下を招くことにもなります。

解決策、質問文(FAQ)の粒度は『一意』となるよう意識する

こういった問題を回避するためにも、FAQの質問文は一意となる粒度を意識すべきです。「~について」「関連」「概要」といったワードは、さまざまな事象に適用できてしまうため、それを受け取るお客様の解釈も多岐に及んでしまいます。幅広いパターンに適用できる「~について」などのワードは、FAQでは極力使わないようにしましょう。

質問文の範囲外の回答

このFAQ、どう思いますか?質問文の範囲外の回答、このFAQ、どう思いますか?のイメージ

お客様に丁寧な回答を届けようとして、質問文の範囲外の回答を掲載するケースも見られますが、こちらも避けるべきです。一例として、「クレジットカード払いへの変更方法を教えて」という質問文に対し、「クレジットカード払いの変更方法」だけでなく、「窓払いへの変更方法」に対する回答も掲載するケースがあります。

クレジットカード払いへの変更方法のみを求めているお客様にとって、窓口払いへの変更方法は不要な情報です。余計な情報で長文となるため、お客様がミスリードする恐れもあります。

解決策、質問文の範囲外の回答は記載しない

1つの質問に対し2つの回答を掲載するような場合は、質問自体を分割すべきです。もし「関連項目」として「窓口払いへの変更方法」を掲載したいのであれば、回答として「クレジットカード払いへの変更方法」を記載し、関連項目として「窓口払いへの変更方法」をハイパーリンクでつなげるようにしましょう。

FAQ本文を端末まで読むユーザーは少数

基本的に、FAQの本文を文末まで読むお客様は少数です。冒頭に欲しい情報がなければ、そこで離脱してしまう可能性が高いです。可能な限り、要点を絞った端的なFAQを意識しましょう。

回答文の不適切表現

どれに該当するか、正しく判別できますか?それ以前に・・・読み解こう!と、思えますか?

質問に対し契約状況など、お客様によってさまざまパターンがある場合、各パターンをテキストで書きつらねると、視認性が悪く、FAQで自己解決しようというお客様の意欲を失わせてしまいます。

そのため、一目で理解できるようにウィザード型マトリクス型のFAQを作成し、「読ませるFAQ」ではなく、「見せるFAQ」とするのがおすすめです。

解決策、ウィザード・マトリクス等を積極活用し、「読ませるFAQ」→「見せる」FAQへ

特に、Webページを見るユーザーは、テキストを流し読みする傾向があります。視認性高く、一目で直感的に回答が理解できるFAQを作成すると、さらなる自己解決率の向上が期待できます。

自己解決できないFAQ(運用性)

自己解決できない(可能性がある)例~その1~

FAQサイトは「自己解決チャネル」です。そのため自己解決に導けない可能性のあるFAQは改善が必要です。

例えば「自宅住所の変更方法」という質問に対し、「会員ページにログインし、【ご契約情報変更】よりお手続きできます」という回答を用意したとします。

確かにこれで、「契約情報変更」から手続きができることは理解できます。しかし、具体的な完了手順の案内がありません。そのためお客様から「契約情報変更ページで、具体的にどういう手順で進めるのか」という問合せが発生する可能性があります。

自己解決できない(可能性がある)例~その2~

お客様の契約状況など、条件によって手続きのパターンが変わるケースも、お客様が契約状況を理解していない可能性があるため、「契約状況によって手続きが異なります」という回答では、自己解決することができません。

企業が考える「当たり前」は、ユーザーにとっての「当たり前」ではない

このようなケースの多くは、企業が考える「当たり前」と、お客様にとっての「当たり前」が同じではないことに起因します。

FAQに回答を掲載しているにもかかわらず、自己解決率が低い問合せに関しては、完了手順までの記載がFAQにあるのか、しっかりと確認しましょう。そして必要条件がある際には、そのフォローも端的でわかりやすく案内しましょう。

FAQサイトの運用性の確保方法

最新、正確、適切な状態を保つために必要なアクション例、FAQ管理担当のみが、すべてを対応することは現実的でしょうか・・・

FAQを運用していく中で、新サービス開始、サービス仕様変更といった環境変化は避けられません。FAQを常に最新、正確、適切な状態に保つことができる体制を構築、維持する「FAQの運用性」の確保にも目を向ける必要があります。

しかし、FAQサイトを最新、正確、適切な状態に保つために必要なアクションは多岐にわたり、FAQ担当者のみですべて対応することは現実的ではありません。運用性を確保するには、企業が一丸となって取り組む必要があります。

運用性を確保するためには、本来、企業一丸での対応が必要

新サービスの導入などが行われた際には、サービス担当部署から新サービスの情報や新規FAQ案・既存FAQ修正案などの共有が不可欠ですし、コンタクトリーズン分析やVOC分析に基づくFAQの刷新などは、CS担当者営業担当者からのフィードバックが重要になります。そのうえで、FAQ担当者が「適量性」「効率性」「有効性」を確保するための分析やライティングルールの策定が必要となるのです。

活きたVOCを積極活用するため、FAQ管理担当はCS部門に

最前線のCCオペレータが持つ最新の業務知識と『活きたVOC』を積極活用

中でも、CS担当者からの活きたVOCの積極活用は、FAQの品質向上においてとても重要となります。

実際のお客様の声を集めたVOCは、要望や苦情などネガティブな意見だけでなく、ポジティブな声も含まれています。そういったお客様の声を活用できれば、FAQを自己解決に導く高品質なものにブラッシュアップできます。

そのため、FAQの管理担当は、CS部門に設置することがおすすめです。そうすればお客様の声をスピーディーに反映することができるからです。

ただ、CS部門のオペレーター目線によりすぎるのは要注意です。オペレーターとしては問合せ件数を減らすために、「1つのFAQに対し、複数の回答を掲載してほしい」といったフィードバックをすることが珍しくありません。またお客様の声を深読みしたり、お客様目線というよりは、アップセル/クロスセルにつながるFAQを要望することもあります。

FAQは、あくまでも「お客様が自己解決するためのチャネル」であり、その目線はオペレーターではなくお客様に向いているべきです。オペレーターの意見を反映しすぎないよう、FAQ担当者には客観性を持つことが求められます。

FAQサイトの運用・改善ポイントのまとめ

FAQサイトの運用・改善ポイントのまとめのイメージ図

FAQサイトの運用・改善を図るためには、「適量性」「効率性」「有効性」という3ステップの品質向上サイクルに加え、企業一丸となって取り組む「運用性」が重要となります。

適量性スコープを設定したうえで、コンタクトリーズンとFAQの突合を行い、必要なFAQ・不要なFAQを精査することが重要です。

効率性においては、FAQを見たお客様が迷うことなく答えにたどり着けるように、質問文(タイトル)を簡潔明瞭にし、スマホユーザーへの考慮をしたうえで、一意となるFAQとすることが大切です。

有効性では、「読ませるFAQ」ではなく「見せるFAQ」ということを意識しましょう。また回答には必ず具体的な手順まで記載し、「企業にとっては当たり前な前提条件をクリアした回答文」とはしないようにしましょう。

最後に運用性は、企業一丸となって対応する必要があります。特にCS部門のVOCをFAQに積極活用するため、FAQ管理担当はCS部門に設置することが望ましいです。その際には、FAQがオペレーター目線に寄せすぎないことが重要です。

FAQのプロが支援するアルティウスリンクのアセスメントサービス

FAQのプロが支援するアルティウスリンクのアセスメントサービスのイメージ画像

繰り返しとなりますが、FAQサイトのニーズは年々高まっており、業務効率化だけでなくお客様満足度向上の面でも、FAQサイトの高品質化は重要なビジネス課題となっています。

しかし、これまで説明してきたとおり、企業が一丸となって運用・改善を図らなければ高品質なFAQサイトを実現することは難しくなります。実際、リソースの問題から「FAQサイトにそこまで注力できない」とお困りの企業も少なくありません。

そんな時は、ぜひアルティウスリンクのアセスメントサービスをご検討ください。「FAQのプロ」と呼べるコンサルタントが、お客様企業の品質向上に向けたプロセスごとの課題を確認・分析。既存FAQ 内容(質問文、回答文)の改善など、具体的な改善提案も実施します。

FAQ はもちろん、 AIチャットボットやVOC分析などでお困りの際は、KDDI・三井物産が共同出資するデジタルBPO企業として、ナショナルクライアントから中小企業まで幅広いお客様企業のビジネスを支援しているアルティウスリンクまでご相談ください。

FAQナレッジアセスメント
AIチャットボット品質アセスメント
VOC分析サービス

関連サービス・事例