カスタマーサービスにおいてCX向上は避けては通ることができない課題であり、その実現方法もさまざまです。そのため、CX向上の実現に向けては、その重要性への理解を深めた上で、自社に適したコミュニケーションを見極め、それに応じたソリューションを選定することが求められます。これらについて、3回にわたってご紹介します。
企業活動において収益性の向上は必要不可欠な課題ですが、CX向上はこの課題解決の打ち手となるため重要です。収益性を向上させるためには、大きく分けて新規顧客の獲得と既存顧客のLTV(ライフ・タイム・バリュー)向上が必要です。また、商品やサービス価格の維持も収益性の低下を防ぐため、必要となります。この3点について、CX向上がそれぞれどのように貢献するのか、お伝えします。
新規顧客獲得への貢献
消費者の購買行動が、AIDMA(アイドマ)からAISAS(アイサス), AISCEAS(アイシーズ)へと変化しているように、顧客は購入後に口コミなどで、商品評価や購入体験を共有します。そしてこの口コミは他の消費者の参考となり、購入を判断する上での大きな材料となります。購入を通じたCXが高ければ、口コミは広告や営業と同様の大きな訴求力を持ち、より多くの新規顧客の獲得が可能となります。
新規顧客の獲得コストは一般的に既存顧客の維持コストの5倍かかるといわれています(1:5の法則)。主に広告費や営業活動費が新規顧客の獲得コストですが、CX向上は広告や営業活動と同等の効果をもたらすことから、CX向上によって新規顧客の獲得コストを抑えることも可能と言えるでしょう。
既存顧客のLTV向上
収益性を高めるためには、獲得した顧客の解約を防ぎ、LTVを向上させることが必要です。このためには、解約に至る原因を突き止め、改善を行うことが必要です。解約理由はさまざまですが、多くの企業で顧客が解約に至る理由の一つが、「サービスに対する不満」です。そのため、電話による問合せ窓口やWebといったカスタマーサービスを提供する顧客接点においてより良いCXを提供し、不満を解消することが重要となります。
また、何かサービスにおいて問題が発生した際も、その問合せ対応やフォローを通じてより良いCXを提供することができれば、問題が発生しない状態と比べ、結果として高い顧客満足が得られる※1といわれており、この点においてもCX向上は重要な要素といえます。
「※1グッドマンの第一法則」
価格の維持にも貢献するCX
CXは商品やサービスの価格へも影響をもたらします。一般的に顧客は価格に納得し、購入を決めます。しかし、その商品やサービス自体、また、購入時や問合せといった過程でトラブルが多く発生すると、商品やサービスに対するロイヤルティや価格への納得感が低下します。このような状態に陥ると、価格へ不満が高まり、企業は価格の見直しを迫られる可能性があります。これを防ぐためにも、顧客が問題を抱えた際にはスムーズに解決できる環境を整え、より良いCXを提供することが求められます。
以上3点の通り、CX向上は企業の収益性向上に貢献できるため、カスタマーサービスにおける重要な課題となっています。今回は、CXの重要性についてお伝えしました。次回は、より具体的に、コミュニケーションデザインの方法をお伝えし、その上で有効なDXソリューションについてお伝えします。

抽象的にしないCXの捉え方と実践方法【コミュニケーションデザイン編】
コラム
カスタマーサービスにおいてCX向上は避けては通ることができない課題であり、その実現方法もさまざまです。本記事では、CX向上に向けた企業と顧客のコミュニケーションデザインについてお伝えします。