カスタマーエクスペリエンスが注目される背景
製品やサービスのコモディティ化が進み、お客様の購買行動における選択基準は、製品やその機能の所有に価値をおく「モノ消費」から製品やサービスから得られる体験に価値をおく「コト消費」に移行しています。
このような潮流の中、企業はお客様の体験価値(Customer Experience=CX)の質を高め、企業に対するお客様のロイヤルティ向上に努めることで、購買行動につなげる動きが活性化しています。
ロイヤルティとは
企業にとって必要不可欠なお客様のロイヤルティですが、これは3つの要素で構成されています。
- 機能的価値
モノの性能や機能に対する価値 - 情緒的価値
モノやサービスから得られる、心理的な動きに対する価値 - 社会的価値
モノやサービスが与える社会への影響、貢献の価値
製品の性能や機能を競っていた「モノ消費」の時代では、「機能的価値」がロイヤルティに直結していましたが、「コト消費」に移行する現在のお客様においては、この中の「情緒的価値」および「社会的価値」が高まってきているとされています。そのため、企業においても、この「情緒的価値」および「社会的価値」を高めるような、カスタマーエクスペリエンスを提供する必要があります。
では、顧客接点の一つであるコンタクトセンターにおいては、どのように「情緒的価値」を高めていけばよいのでしょうか。
コンタクトセンターにおける「情緒的価値」の向上
お客様の把握と価値提供の定義
一言で「情緒的価値」といっても、年齢や性別など、顧客特性によって「情緒的価値」の捉え方はさまざまです。そのため、まずはコンタクトセンターへ入電する顧客特性の把握を行った上で、どのような価値を与えられそうかを考えていかなければなりません。多くの企業では、企業側が用意したチャネルやKPIを起点として「チャネル導入によりお客様に与えられる影響」や「KPI達成によるお客様への提供価値」など、企業視点でコンタクトセンターの提供価値を判断することがありますが、これでは一方的な視点となり実際のお客様の感じる「情緒的価値」とはかい離が生じます。このような状態を避けるためにも、コンタクトセンターへ入電する実際の顧客特性を把握から始め、それらお客様の視点から「情緒的価値」を考える必要があります。
デジタルチャネルとリアルチャネルの設計
情緒的価値を提供する上では、チャネル設計にも注意が必要です。まず、チャットやLINEなどのデジタルチャネルの必要性は以前から述べられていることですが、リックテレコム「コールセンター白書2019」では、デジタルチャネルを使用するが、解決しない場合はリアルチャネルに移行せず、あきらめるお客様が一定層存在することが明らかになっています(【図1】)。
【図1】
出典:リックテレコム「コールセンター白書2019」
そのため、デジタルチャネルを用意しなければお客様、特に若年層に対しては情緒的価値はおろか、コミュニケーションすらできないような状況となっており、もはやデジタルチャネルの導入は必須であるといえます。
しかしながらその一方で、企業がデジタルチャネルへ偏重するあまり、お客様とのコミュニケーションを希薄化させているという調査結果も存在します。Accenture Global Consumer Pulse Surveyによると、約60%のお客様が、特に早く回答が欲しい場合やアフターサービスの問題を解決する場合人が介入するリアルチャネルが有効であると回答しています(【図2】)。
【図2】
出典:Accenture Global Consumer Pulse Survey
これらの結果からも、デジタルチャネルへの関心、期待が高まる一方、多くのお客様は依然としてリアルチャネルでの応対を求めていることが分かりますが、このことから目を背け、デジタルチャネルに偏重してしまうと、コミュニケーション機会やその質が低下し、お客様に対する価値提供の質も低下します。
今後は、デジタルチャネルを積極的に導入しつつも、リアルチャネルとの使い分けを行っていくことが、お客様への「情緒的価値」提供の基盤づくりになります。
従業員を起点としたカスタマーエクスペリエンスの向上
従業員の体験価値(Employee Experience=EX)を向上させ、ロイヤルティの高い従業員を増やすことで、CXが向上することは以前からうたわれています。お客様が情緒的価値を重要とする「コト消費」では、よりEX向上の重要性が高まります。人による応対が情緒的価値に大きな影響を与えることは明白であり、その応対を行うのは従業員、コンタクトセンターではオペレーターです。
近年では、単なる賃金や職場環境だけでなく、「仕事を通じて学べる価値」「仕事の社会的価値」などがEXに大きく影響することもいわれており、これらをオペレーターへ提供する機会を増やし、EXを向上させることで、CX向上につなげていくことが求められます。
CX向上のためのアルティウスリンクのサービス
「コト消費」の時代においてデジタルチャネルとリアルチャネル双方の重要性が高まる中では、コンタクトセンターにおいて自社のお客様を適切に把握し、いかに自社のお客様に適したチャネル設計を行い、より良いCXを提供できるかがカギとなります。
当社では、CX向上に向けて、デジタルチャネルとリアルチャネルを組み合わせ、最適なチャネル設計を行った事例があります。
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コンタクトセンターにおけるCX向上にお悩みの際は、ぜひご相談ください。