オムニチャネルの推進にあたり、まず問合せ状況の可視化によってカスタマーサービスの「あり姿」を明らかにすることが必要と前回の記事で紹介しました。この「あり姿」の実現において重要な役割を果たすのがFAQです。Web上で自己解決を促すツールであるFAQは、メールサポートやチャットボットなどのノンボイスチャネルにおいても解決方法の提示やナレッジ構築で使用されており、顧客応対の根幹を支えています。そのためFAQの整備が十分でない場合は、オムニチャネル化を実現しても、CX向上を実現することは困難です。今回は、オムニチャネル推進におけるFAQ整備の重要性について紹介します。
自己解決を望んでいるお客様と企業
汎用的な問合せから個別対応が必要な相談まで、すべての問合せがオペレーターへ集中すると、回線のひっ迫により応答率やサービスレベルの低下だけでなく対応コストの増加につながります。そのため、汎用的な問合せはお客様の自己解決を促し、個別対応が必要なもののみ有人で対応するといった環境整備を目指します。一方、お客様においても、汎用的な問合せではオペレーターとの電話対応を必要とせず、FAQサイトやAIから得た回答で自己解決を望むお客様が多く存在します。企業とお客様双方のニーズを満たすため、企業はお客様からの問合せを自己解決できるものとできないものへと分別し、お客様の問題をスムーズに解決するカスタマーサービス体制の構築を求められています。FAQサイトの整備は、Web上でのお客様の自己解決率の向上が期待でき、オムニチャネル推進における非対面チャネルの強化につながる重要な取り組みの一つといえます。
FAQサイトの成功の鍵は?
成功の鍵はお客様の利便性をKPIとし、改善を続けることです。KPIは3つあり、FAQの品揃え、FAQの見つけやすさ、FAQのわかりやすさです。その確認ポイントについて紹介します。
①FAQの品揃え
問合せに対する回答がなければ自己解決につながらないため、お客様が求めている回答、具体的にはお客様から寄せられるコンタクトリーズンを分析し、その結果から、よくある問合せ上位ランキングに並び替え、問合せ上位から順にFAQを作成していくことで漏れなくダブりなく品揃えが整理できます。
②FAQの見つけやすさ
お客様がFAQサイトの検索窓からキーワードを入力して「検索結果がありません」という表示が出る確率を一定基準以下に抑制します。これを0件ヒット率と呼んでおり、同数値を限りなく少なくしていくことを目標とします。主な改善活動として、FAQタグの追加や、質問文や回答文の変更などがあります。
③FAQの分かりやすさ
伝えたい情報が、お客様視点の表記になっているかを確認します。手法としては、お客様を読み手として、分かりやすさを基準とした表記ルールを策定します。当社の事例では、「回答は結論から記載する」「時系列を表現する場合には箇条書きの活用」といったルールや、コンタクトセンターで蓄積したお客様との対話を基にした表記に統一しお客様視点のFAQを作成しています。
また、上記を定期的に確認するためにも、定量目標値を設け、正答率を測定する仕組みづくりも重要です。定量データを収集し、公開したFAQサイトがお客様の自己解決に貢献しているか測定します。測定の方法には、各FAQにアンケートを設置し、提示した回答によって問題が「解決したか」を把握できるような仕組みの導入や、各FAQのアクセス状況や検索の履歴を確認できるアクセス解析ツールを活用して正答率を測定します。測定結果を分析し、FAQサイトの内容が適切か再考してアップデートを行います。
FAQを成長させるためには継続したメンテナンスが重要
FAQサイトの作成、見直し後も、問合せの変化を確認し、継続的なメンテナンスが重要です。顧客ニーズをとらえ、アップデートし続けることで、チャットボットなどのノンボイスチャネルへの活用はもちろん、オペレーター向けのFAQとしても活用することが可能となり、有人対応、無人対応双方でCX向上が可能となります。
オムニチャネルをはじめとしたDXの推進には、常に顧客起点でエフォートレスな問題解決ができる仕組みを構築していくことが重要です。お客様にどのようなCXを提供したいのか目的を明確にし、改善のPDCAを回していく必要があります。そのためには、日ごろからお客様の問合せに対応をしている現場の力が不可欠です。当社では、長年のコンタクトセンター運営から得た現場力を生かしたFAQメンテナンスのサービスを行っています。お困りの際は、ぜひご相談ください。